1. はじめに

ここに記した内容は、「親英体道」をできうる限り正しく正確に説明しようと解説したものです。
しかしながら、これを読んだだけでは「親英体道」を十分に「ご理解」いただくことは出来ません。[A]私自身、まだまだ勉強の過程であり、説明が仕切れていない部分があるのも事実です。(道祖・井上先生は、「60、70(歳)は鼻垂れ小僧」と、道を究めていくことの困難さを説かれていました。)

親英体道とは何か、それは全て実際の日々のお稽古の中にその答えがあり、言葉で解説できるものではないからです。 
かといって、いきなり説明もなくとりあえず一緒にお稽古をしましょうというのは難しいでしょう。

そこで、「親英体道」について「どういう武道なのか?」、「何を目指しているのか?」など、普遍的に何かを始める前に関心を持たれるであろう点を答えたいと思い解説しました。

縁あって今お読みくださる皆様が、お稽古を始める端緒になれば幸いです。

 

令和四年吉日

親英体道 代表 和多田 十三

 

 

2. 親英体道とは何か  

2-1.  継承され続ける『極意』

『親英体道とは
 宇宙の親和力の力徳を
 表現体より具現する
 胆力を養成する
 お稽古です』

初見の皆様は、この言葉の難解さに驚かれるのではないでしょうか。
それも無理はありません。

この『御言葉』は、道場内で常に目に付く場所に掲げられていますが、お稽古し始めの頃は誰しも、奥深そうだと感じつつもその難解さに理解が追いつかず、色々な感想を持つものです。

しかしながら、実際にお稽古を習い始めると、これほど親英体道を説明出来ているものは無いと確信できるようになっていきます。

これは親英体道の道祖である、井上鑑昭(いのうえのりあき)先生が親英体道とは何かについて述べた『御言葉』です。

もともとその元になっているのは、井上先生のご実家である井上家に、古事記の頃以前から脈々と伝わる、『平法学』という陰陽道や帝王学とも似て非なる唯一無二の教えです。

この『平法学』を、井上先生が一生を通して研鑽し、集大成としてまとめたものが親英体道になります。

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2-2.『流れのお稽古』という在り方

ここでは、親英体道の『流れ』という在り方を中心に、先の『極意』をもう少し噛み砕いて説明いたします。

油井先生からは「親英体道とは流れのお稽古です」と井上先生がおっしゃっていたと伺ったことがあります。
では、『流れのお稽古』とはなんでしょうか。
まずは『流れ』について、私達の身の回りである「自然界」の動き(流れ)を例に取りお話ししましょう。

一日は太陽の日の出から始まり、天中に昇りやがて日が沈みます。
月もまた同じく昇り沈みを繰り返し、その形は満ち欠けをしながら変化します。

その日の天気・天候も太陽や月の影響を受け、さらには雲や風や雨や雪、海の潮の満ち引きなどを伴って我々に目に見える形に具現化し変化をもたらします。

その日の重なりが季節となり四季を作り一年を作り上げます。
季節の移り変わりがはっきりしている日本の気候は、普段の生活の中でこうした自然の動きを感じやすいでしょう。

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2-3. 『陰と陽』の真理とその動き

親英体道について説明していると、道場でもよく、『陰と陽』の在り方をつかって説明することがあります。

古事記の中にもみられるイザナミとイザナキ(イザナギ)の働きように、陰陽の考え方が親英体道でも取り入れられています。
(陰陽については、道教との繋がりも言われますが、古来から日本にもある考え方と聞いております。[D]これは一つの解釈であり、これだけで親英体道の神髄を説明できているわけではありません。

己の両の手を剣に見立て、いつも陰の剣と陽の剣、二本の剣が一体となって、あたかもそれぞれが龍の如く動く事を教わります。

これを武術的にいうと「二刀流」で、基本は「直刀の二刀」を使った動きとなります。
なので動きが、おおらかに舞いを踊る「御神楽」の如き動きとなります。[E]直刀の動きは基本であり、応用として棒や短刀、鉄扇等々様々な武器を使いこなします。

そしてそれぞれの剣を『流れ』に沿って動かすことがお稽古です。
剣は、常に陰が陽となり陽が陰となり動き続けます。
そして、ここで大切なのはいつも『陰の剣』です。

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2-4. 武道にとどまらない「教育の実体」としての在り方

油井先生からお聞きしたお言葉で、井上先生が『親英体道とは生成化育の実体である。教育の実体である。良かったり良かったりでなければならない』と述べられたそうです。

ここで皆様にもう一度、『極意』の御言葉を見ていただこうと思います。

『親英体道とは
 宇宙の親和力の力徳を
 表現体より具現する
 胆力を養成する
 お稽古です』

この中に一言も「相手を倒す」や「相手を制する」といった言葉がないことにお気づきでしょうか。
親英体道は、相手を「倒す」武術ではありません。

ある程度お稽古を続けて「入門」し、『流れ』がわかってくると、お稽古のなかで「是化(ぜか)し美化(びか)する」ことを心がけるよう指導しております。

わかりやすく言えば、今日のお稽古が、より良いものになるためにはいま何をすべきかをつかみ、実践してゆく事です。

昨日できた事を、同じように今日してもダメなのです。

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3. 日々のお稽古について

親英体道では、稽古を始めるにあたって、かならず祝詞を神棚に奏上します。
心を清めてから、その日のお稽古を行います。

お稽古は毎回三本の『流れ』を、教授(きょうじゅ:師範クラスの指導者)が示し、それを見真似て2人1組となって取り組みます。

そして、お稽古が終わると、また祝詞を奏上し無事に終わったことをご報告します。

親英体道は、スポーツとは異なり、神事としてお稽古を捉えています。
(元来の武道も惟神(かんながら)の道を追求する手段の一つです。)

ですから、心構えや、身なりにも最低限の配慮が必要です。

例えば、特定の技をを盗むような気持ちで、他の武道も続けながらお稽古する事は意味がなくお断りしています。それはご自身が学ばれてる武道や先生をも冒涜(ぼうとく)することであるからです。

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